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HOW TO — AI活用術 / 初級

AIを壁打ち相手にする企画術|発散・検証・収束の3段階手順とプロンプト例

公開: 2026.07.14 執筆: AI実装ラボ編集部 監修: 株式会社TrysLinx(AI実装会社 / 業務でのAI活用支援の実装知見)

この記事の結論

なぜAIは「壁打ち相手」に向いているのか

企画やアイデア出しを1人で行うと、必ずぶつかる壁があります。視点が固定されること、そして自分の案に自分で反論しにくいことです。人は一度「いける」と思った案の欠点を探すのが苦手で、確証バイアスにより都合の良い情報ばかり集めてしまいます。

かといって同僚に壁打ちを頼むには、相手の時間を奪う遠慮があり、上司相手なら「粗い段階の案を見せたくない」という心理も働きます。ここにAIがはまります。

ただし使い方を間違えると「当たり障りのない一般論が返ってくるだけ」で終わります。ポイントは、ブレストの定石どおり発散・検証・収束の3段階に分けて、段階ごとに別の役割をAIに与えることです。

段階目的AIに与える役割
1. 発散案の量と幅を最大化アイデア量産機・別視点の代弁者
2. 検証穴と反論を先に潰す悪魔の代弁者・懐疑的なレビュアー
3. 収束評価軸で絞り込む整理係・マトリクス作成係

この3段階を混ぜて「良いアイデアを出して評価もして」と一度に頼むのが、最も多い失敗パターンです。発散中に評価が入ると案が萎縮し、評価中に新案が混ざると絞り込めなくなります。以下、段階別に具体的な手順とプロンプト例を見ていきます。

ステップ1|発散:量・視点切替・ペルソナ憑依で幅を出す

発散フェーズの鉄則は「質を求めず量を指定する」ことです。AIに漠然と「アイデアを出して」と頼むと、無難な案を5〜10個出して終わります。数を明示し、質のハードルを下げる一文を添えると、幅が大きく変わります。

プロンプト例①:量出し

「中小製造業向けの新サービスのアイデアを30個出してください。実現性は一切気にしなくて構いません。突飛な案・非常識な案も歓迎します。似た案が続いたら意図的に方向を変えてください。」

30個のうち25個は使えなくて問題ありません。残り5個の中に、自分では出てこなかった切り口があれば十分に元が取れます。

プロンプト例②:視点の強制切り替え

「同じテーマについて、次の5つの視点からそれぞれ3案ずつ出してください。(1)顧客が一番不満に思っていること起点 (2)競合が絶対にやらないこと起点 (3)他業界の成功パターンの転用 (4)自社の弱みを逆手に取る (5)10分の1の予算しかない前提。」

プロンプト例③:ペルソナ憑依

「あなたは50代のベテラン現場責任者です。この企画テーマを聞いたとき、現場目線で『本当はこうしてほしい』と思うことを、本音で10個挙げてください。」

ペルソナ憑依は、実在の顧客インタビューの代わりにはなりませんが、「聞くべき問いの候補」を洗い出す下書きとしては非常に有効です。ほかにも次の工夫が効きます。

ステップ2|検証:悪魔の代弁者に反論させ、穴を先に潰す

案がある程度出そろったら、次は壊す作業です。ここがAI壁打ちの真価が出るところで、人間の同僚には頼みにくい「遠慮のない全力の反論」を、何度でも引き出せます。

プロンプト例④:悪魔の代弁者

「あなたはこの企画に反対する立場の役員です。この企画案を通したくない理由を、鋭いものから順に10個挙げてください。感情的な反対ではなく、経営数字・実現性・リスクの観点で、論理的に潰しにきてください。」

プロンプト例⑤:立場別の反論想定

「この企画案に対して、(1)予算を管理する経理部長 (2)実務を担う現場担当者 (3)慎重派の社長、それぞれが会議で口にしそうな質問と懸念を、立場ごとに5個ずつ挙げてください。あわせて、各質問への回答の方向性も添えてください。」

プロンプト例⑥:前提の棚卸し

「この企画が成功するために『暗黙のうちに正しいと仮定していること』を全て列挙してください。そのうち、崩れたら企画全体が成り立たなくなる致命的な前提はどれですか。それを事前に確かめる方法も提案してください。」

検証フェーズで意識したいのは次の3点です。

現場の実感: TrysLinxの導入支援でも、AI活用が定着する企業ほど「アイデア出し」より先に「反論出し」から使い始める傾向があります。稟議や会議で実際に飛んでくる質問をAIが7割方言い当てるため、効果が一度で体感でき、社内に広がりやすいのです。

ステップ3|収束:評価軸を自分で決めてマトリクスで絞る

最後は絞り込みです。ここで最も重要なのは、評価軸だけはAIに丸投げしないこと。何を重視するか(売上インパクトか、着手の速さか、既存業務との相性か)は経営判断そのものであり、自社の事情を知らないAIに決めさせると、もっともらしいが的外れな序列がつきます。

手順はシンプルです。

  1. 自分で評価軸を2〜4個決める(例:インパクト/実現性/コスト/自社の強みとの整合)
  2. 各軸の意味を一文で定義する(「実現性=3カ月以内に既存メンバーで着手できるか」など)
  3. AIに候補案を軸ごとに採点・表化させる
  4. 採点理由を読み、納得できない箇所は自分で上書きする

プロンプト例⑦:評価マトリクス化

「以下の8案を『インパクト(成功時の売上貢献)』『実現性(3カ月以内に既存人員で着手可能か)』の2軸で、それぞれ5点満点で採点し、表にしてください。各点数には必ず1行の理由を添えてください。最後に、高インパクト×高実現性の象限に入る案を挙げてください。」

出力イメージは次のような表です。

インパクト実現性判定
A案:既存顧客向け追加サービス45本命
B案:新規チャネル開拓52中期検討
C案:業務内製化ツール34並行して小さく着手

注意点として、AIの採点は判断材料であって判断ではありません。特に「自社の強みとの整合」のような内部情報に依存する軸は、AIには採点根拠がないため、前提となる自社情報(顧客層・体制・過去の成否)をプロンプトに書き込むか、その軸だけ自分で採点するのが現実的です。逆に、絞り込んだ後に「この2案を統合した第3案は作れないか」と再度発散に戻すと、単独案より強い企画に化けることがよくあります。

会議前の下ごしらえとして使う|運用の型と注意点

AI壁打ちが最も費用対効果よく効くのは、実は会議の前です。ブレスト会議の多くは「その場で発散から始める」ために時間切れになりますが、参加者が事前にAIと1往復してくれば、会議は検証と意思決定から始められます。

おすすめの運用は次の流れです。

  1. 会議2〜3日前:発起人がAIで発散+粗い絞り込みを済ませ、たたき台(本命2〜3案+ボツ案リスト)を共有する
  2. 会議30分前:プロンプト例⑤で「参加者別の想定質問リスト」を作り、答えを準備しておく
  3. 会議中:人間同士は、AIには出せない情報(顧客の生の声・社内の温度感・過去の経緯)の突き合わせに時間を使う
  4. 会議後:決まりかけた案をもう一度プロンプト例④の悪魔の代弁者にかけ、勢いで見落とした穴がないか最終確認する

「ボツ案リストも共有する」のがコツです。会議で「その案は考えたのか」という後出しの指摘を防ぎ、検討の網羅性を示せます。

最後に、運用上の注意点をまとめます。

TrysLinxではこれまで98件以上のAI導入を支援し、自社でも523体のAIエージェントを業務運用していますが、企画・立案領域は「特別なツールを買わなくても、今日から手元のAIで始められる」数少ない領域です。まずは次の企画会議の前に、30分だけ試してみてください。

よくある質問

Q. AIとの壁打ちにはChatGPTとClaudeとGeminiのどれを使えばいいですか?

壁打ち用途なら主要サービスのいずれでも実践できます。差よりも「量の指定」「役割の指定」「往復の深さ」の影響が大きいためです。まずは普段使っているもので試し、物足りなければ複数を比較するのが現実的です。

Q. AIに出させたアイデアをそのまま企画書に使っても問題ありませんか?

アイデアの叩き台としての利用は一般的ですが、含まれる数値・市場情報・制度は誤りうるため一次情報での裏取りが必要です。また機密情報の入力可否や生成物の扱いは、自社のAI利用ルールと各サービスの規約の確認をおすすめします。

Q. 1人でブレストするのとAI壁打ちでは何が一番違いますか?

最大の違いは「自分の案への反論を強制的に浴びられる」点です。1人では確証バイアスで欠点を見落としがちですが、AIに悪魔の代弁者役を与えれば遠慮のない反論を何度でも得られます。発散の量と視点の幅も補えます。

出典・参考

アイデア出しの先、実装までを一緒に

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